日本共産党神奈川県議会議員団

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議会報告
2023年6月29日

2023年第2回定例会 質問趣意書(文書質問)

1 黒岩知事の県政運営に人権尊重の意識強化を
 本年 4 月の県知事選挙投票日直前に週刊誌に黒岩知事の過去の 11 年間にわたる不倫問題が掲載され、知事の人権感覚を疑うやりとりが明らかに報じられました。知事は記者会見でその事実を認めています。しかしながら、知事は謝罪をしながらも選挙で当選したことを以て、県民の信任を得たと解釈し、「仕事で信頼を回復する」と記者会見で述べています。


 私たち共産党県議団のもとには、「そうと知らずに期日前に投票してしまった。どうしてくれるんだ」「なぜ平然と公衆の面前にでられるのか」という県民の皆さんの声が直接届けられています。県知事選の無効票は21万2482(投票総数の6.91%)に上り、そもそもこの問題を知る由もない県民もいらっしゃいますので当選したことを以て信任を得たとはいえません。
 この問題は知事の私生活の問題に過ぎないと矮小化する議論がありますが、私たち共産党県議会議員団は、不倫問題であるということをもって、こうして質問するわけではありません。行政運営を行う知事には何より人権感覚が求められます。その意味で県知事としての適性が問われる問題であると考えるからです。女性の人権軽視と女性蔑視が透けて見える問題であり、県民の中には「黒岩知事の人権侵害をなかったことにできない女性たちの会」も立ち上がり、4 月中に知事に「信用失墜行為の責任を取り今すぐ辞任することを求める」とする要請がなされ抗議行動が続けられています。


 私たちも本来なら黒岩知事は知事の職を退くべきと考えますが、現実にはその姿勢が示されない以上、確認しなければいけないことがあります。


●そこで知事に質問です。知事の不祥事問題で、知事室はじめ県庁に寄せられた苦情の総数と県民ご意見の代表的なものをうかがいます。また、4月 10 日の知事就任会見でいろいろと謝罪をされていますが、何を問題と考え誰に対する謝罪だったのか、改めて確認させていただきます。また、寄せられる県民の声に対するお考えをうかがいます。


 県職労連の職員に対する県政アンケート調査では、3 期 12 年の黒岩氏を「支持する」と回答した方は 9%と、1 割にも満たない。「すぐ怒鳴り散らし、だめ出しをされるので対応には気をつけること」「小さなことでも黒岩氏の気にかけている情報はすぐにいれておかないと後で大変」「黒岩氏が気に入っている未病等の表現を必ずちりばめること」等々の取り扱いマニュアルが庁内で共有されていたといわれています。との記述があります。

 職員が委縮する組織で健全な県政運営ができるのでしょうか。上司のパワハラ体質は必ず組織に悪影響を及ぼします。
 この件とは別に、2016 年には県の若手職員のパワハラ自死事件がありました。私たちはご遺族にお話をうかがいましたが、知事室を訪れたご遺族と記念写真を撮ろうとした知事の行為はご遺族に相当なショックを与えています。また加害職員を処分することもありませんでした。直近でもある部局のパワハラを受けたというご相談も受けました。


 知事の希薄な人権感覚、苦情対応業務などが要因で心を病む職員もいて、労働安全衛生の観点からメンタルケアが重要となっています。
 県民のために働く職員にこのような負担を負わせることとなった責任は非常に重いと考えます。


●そこで知事にうかがいます。今回明らかになった問題を契機に、庁内でセクハラ・パワハラを防止するためのさらなる効果的な方策が必要だと考えますが、見解をうかがいます。また職員のメンタルケアは継続的に行う必要がありますが、どのように取り組むか見解をうかがいます。


 次に女性の活躍応援団についてうかがいます。知事の不祥事が女性問題に起因することもあり、改めて知事が女性の活躍できる県政にどう貢献できるのかが問われています。


 知事が団長を務める女性の活躍応援団は、コロナ禍の影響でトップが集まっての会議が持たれなかったが私たちが 2022 年の一般質問で、応援団が掛け声倒れになっていないかという趣旨の指摘をし、のちに 2022 年 11 月に二年ぶりの全体会議が持たれました。各応援団企業のトップが女性の活躍について掲げた行動宣言を検証し、課題が意識されたことは重要でした。例えば新たなメンバーとなられた北里大学の女性学長が、女性研究者育成の助成制度を制定されるという宣言は非常に励まされる中身です。
 ところが知事の宣言をみるとデジタル化に関するものがほとんどで女性の活躍という視点が欠落していました。女性が意思決定過程にしっかり参画し、女性の安定雇用の確保、賃金格差を解消していく等具体的施策が必要です。


●そこで知事にうかがいます。改めて、女性活躍応援団長として、女性が活躍できる社会に対する認識と、県の職場で女性の活躍を図るために具体的に何をなすべきか見解をうかがいます。


2 行政 DX
(1)基盤整備について
 DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革することを指します。本県もデジタル化でやさしい社会を掲げる以上、誰かを排除するのではなくすべての県民が享受できるデジタル化の環境整備が求められます。携帯電話のインフラ網が整備され、スマートフォンやタブレット端末が普及している昨今、災害発生時の通信手段の確保が課題です。
 大規模災害発生時には、避難者がそれらの手段を利用できなくなり混乱をまねく恐れもあります。熊本市は 2016 年の熊本地震を契機に市役所から一元管理された防災 Wi-Fi を整備しています。固定回線をベースとする公衆 Wi-Fi を無料開放し、連絡・情報収集が可能な環境とするために、総務省は 2021 年度までの Wi-Fi 整備目標数として約 3 万カ所を設定し整備を推進してきました。また、文化施設においては平常時はインバウンドなど観光や教育の活性化につながります。その意味でケーブルにつなぐことなくインターネットへのアクセスを可能にする Wi-Fi 環境の整備は重要な課題です。
 本県はこの総務省の補助制度は活用せず、携帯会社と契約して、Wi−Fi 利用のために設置するアクセスポイントの占有料を県が負担する代わりに、災害時には Wi−Fi を開放して無料でだれでも利用できる契約で設置を進めてきたということです。
指定管理施設においては設置については施設管理者の判断となっています。

 
 本県県民利用施設では、66 か所中 Wi−Fi 未設置の施設が 34 か所と、半数を超えています。しかもアクセスポイントが設置されていても、そもそも本県の設置のしかただと、携帯電話会社や固定ネット回線の契約しかなく使えないわけで、契約料を支払う能力や情報・知識が求められます。携帯料金が支払えない経済状況の方々はサービスが利用できません。料金未納で契約切れになったスマートフォンや誰かのお古のスマートフォンでもフリーWi-Fi 環境があれば使えます。5Gのネットワークでカバーできるということですがこれもまた携帯電話会社との契約です。


 横浜のある県有施設で、市民主催の講演会が開かれ、県外から来られた講師の方が、ステージで「県の施設でありながら Wi-Fi 環境がないなんて、驚いた」と嘆いておられる場面に遭遇しました。「神奈川県はどうなっている」といわれて恥ずかしい思いをしました。


 神奈川県としては、だれでも無料で接続できるフリーWi-Fi の設置は個人情報保護の観点もあり県としては行わない方針だとのことですが、インターネットアクセスが不便な県のままでいいのでしょうか。


 調べたところ、埼玉県も大阪府も京都府も山梨県も福岡県も沖縄県も自治体主導でフリーWi-Fi を設置しています。いくつかの自治体の担当課に聞き取りをしましたが、どこも災害時の対応や、インバウンドなど観光振興の観点から導入を決めておられます。その方法はさまざまで、設置を手上げした施設に、立ち上げ時の補助金制度をもうけた自治体、通信費を負担している自治体など、様々です。総務省の補助金を活用してすすめた自治体もありました。セキュリティに関しては例えば埼玉県は、総務省の「Wi-Fi 使用者向けセキュリティ対策の手引き」を参考にメール登録で認証したりするそうです。

 スマホやタブレット、PC など個人の端末はネットワークというインフラなしには成立しません。いまや誰しもデジタル化の波にはあらがえず、ネットワークにつながらないことは死活問題です。多くの行政サービスがオンライン化され窓口業務が縮小されている中で、ネットワークに接続できないことは失業時の職探しも困難です。災害情報もオンライン経由ですから有事には問題となります。今、オンライン会議は一般的になっているので、単純に会議室やホールにネットに繋げられる環境がないと利便性の問題もあります。


 もとより税金で運営する公共施設には公益性が求められます。自宅にネットワーク環境がなく、Wi-Fi が使える店舗を利用することも難しい困窮者であっても、県の施設なら大丈夫、と公益性を重視すべきです。


●そこで知事にうかがいます。デジタル化でやさしい社会をというのであれば、一刻も早くデジタル化の前提条件である誰もが利用できるフリーWi-Fi を県の責任で整備促進することが急がれると考えますが、知事の見解をうかがいます。


⑵ チャット GPT など生成 AI の行政での活用の可否について
 知事は 5 月 17 日の定例会見で、人工知能(AI)を使った対話型ソフト「チャットGPT」を県の業務に試行利用すると発表し、職員 28 名のチームで 5 月から試行を開始し、利用の過程で出てくる課題などを踏まえて、安全に利用するための「ガイドライン」を作成するとしています。また、利用する業務は、「新規事業のアイデア出し」や「公開されている諸資料の要約」などを想定し、個人情報などの重要な情報は入力しない。試行対象の部署や職員は検討中としています。「(チャットGPTは)質の高いサービスで、事業のアイデアづくりや文書作成に活用している自治体もあると承知している」と説明。一方で「海外にサーバーがあることや、入力したデータの二次利用で情報が流出する危険性も指摘されている」と述べ、慎重な検討が必要との認識も示しています。


 「ChatGPT を行政に利用する場合、いくつかの問題が考えられます。以下にいくつかの主な問題を挙げてみます。

1.偏った情報: 2. プライバシーとセキュリティ 3. 誤った情報の提供: 4. 法的・倫理的な問題: 等々、以上が一般的な問題点ですが、行政における具体的な利用方法や運用方針によってさらなる問題が浮かび上がる可能性もあります。行政の利用に際しては、これらの問題に対処するための慎重な計画と対策が必要です。」 

 以上はチャット GPT に、「チャット GPT を行政に利用する場合の問題について」と説明を求めた際の回答です。

 日本政府の個人情報保護委員会は 6 月 2 日にチャット GPT を開発したアメリカのオープン AI に対して「個人の病歴などのプライバシーを侵害する恐れがあるとして個人情報保護法に基づき 1 日付で注意喚起しています。AI の機械学習に当たり、収集する情報に要配慮個人情報が含まれないように取組み、それでも含まれていた場合には即時に削除したり個人が識別できない措置をしたりするよう指導したとのことです。直近では政府の知的財産戦略本部がまとめる推進計画の原案の中で、チャット GPT のような人工知能が生成した著作物が著作権の侵害に当たるか論点整理をする方針を打ち出しています。オリジナルに似た文章や画像を生成することで個々の権利者にとって紛争解決対応も困難になることが指摘されています。現にニューヨークでは、弁護士が審理中の民事訴訟で資料作成に ChatGPT を利用した結果、存在しない判例を引用してしまったことが問題となっています。
 つまり現段階では数々のリスクを孕んだ人工知能なのだということです。

 横浜市の山中市長は、チャット GPT に対し『ELSI(エルシー=倫理的・法的・社会的課題)』がある」と認識していて、市としては活用の可能性を慎重に見極めている段階で、職員の業務用パソコンからはログインできない仕組みを構築済みだといいます。本県も職員の業務での利用にはその措置が取られていることに関しては妥当な措置だと考えます。

 問題があるからこそ、各国で国レベルでの慎重な活用のルールが整備されています。
 イタリアの個人情報保護機関は、個人情報漏洩の疑いがあるとして 3 月、全土でChatGPT のアクセスを一時的に禁止しており、フランスは 2021 年に通称 AI 法を導入し特定のセクターにおける AI の使用やシステムの透明性に関する要件を設けています。イギリスではチャット GPT などの利用に関する留意点を公表し、一般データ保護規則(GDPR)を念頭に置いて、利用者は個人データの活用に伴う法的責任を
負うことなどを明記しました。国段階で法整備が進められているわけです。

 現在、本県では試行するチームで、課題を洗い出して使える業務を精査しているということですが、問題は個人情報の漏洩リスクにとどまりません。チャット GPTの回答の信頼性をどう担保するのか、元データの制約や限界を理解して利用する、この見極めは相当に難しいのではないでしょうか。私たちも情報を入手した際のニュースソース一つ一つの信用性を判断するだけでもかなりな労力を有するというのに、参考データの総量の把握からどうやって信ぴょう性を見極められるのか、また文書作成スキルの後退という弊害もあります。夢の機能を最大限生かしたいという期待と、実際に行政機関として正確な事務を執行することは現時点では相反せざるを得ず時期尚早です。


●そこで、知事に伺います。活用ありきではなくリスクを見極めて現時点での活用を見合わせる判断も含めて検討が必要かと考えますが知事の見解をうかがいます。

(3)5G 基地局設置などを踏まえ、電磁波による健康被害に苦しむ方に配慮した取組


 第5世代無線通信システム、5G の導入により超高速で大容量の通信が可能になります。約 2 時間の映画を、4Gだと 4 分かかるところをわずか 3 秒でスマートフォンに取り込めるようになるとのことです。自動運転や遭難対策にも活用が期待されているシステムでもあります。国においては 2020 年 5G 促進法によって、5Gの通信基地局の早期開設に対し、設備投資額の 15%の法人税減税を行うことを盛り込んでまで、5G 基地局の整備を推進しています。5Gは高い周波数帯を使うことから、一つの基地局のカバーするエリアが小さくなるため、多くの基地局が必要となります。そのような状況のもと、各地で電磁波を発する基地局の設置と健康被害を訴える住民との間で紛争になる例が多々発生しています。


 最近私の地元の横浜市港北区で携帯基地局設置の計画が持ち上がりましたが、電磁波過敏症の方が中心になって設置を見合わせるよう基地局の地権者と設置事業者双方に、住民の方々の声を集めて要請され、設置者が建設を断念した事例があります。心臓ペースメーカーを入れている方もいたからです。一般社団法人日本不整脈デバイス工業会のウェブサイトでは強い電磁波が心臓ペースメーカーに影響を及ぼし、めまいやふらつき動悸など身体に異常をきたす危険性について述べています。

 6 月 10 日、大磯で開催された電磁波問題市民研究会の事務局長 大久保貞利氏のご講演に参加する機会を得ました。電磁波過敏症のみなさんや、市民から不安の声を受けている超党派の市町の議員がたくさん参加されていました。
 会場には、ある日突如激しい頭痛に悩まされ、原因がわからずにいたが、自宅に近接する土地に突如基地局が立っていたことに気づいた。医者に行っても原因不明だったが、頭痛に耐えかねて引っ越すと症状が改善したという方、基地局のそばに行くと鼻血が止まらなくなるという方など、健康被害に苦しむ方が多くいらっしゃいました。
 社会の利便性が高まることは歓迎するところですが、その陰で犠牲を強いられている方がいるのであれば無配慮でいいはずがありません。事業者に対して減税まで行って 5G を推進する以上、その負の影響には最大限の配慮が必要です。


 スマホや PC など自身が能動的に使用するものではなく、好むと好まざるとにかかわらず 24 時間、基地局から放射される絶え間ない電磁波に長時間暴露されることの問題に着目するべきです。国が推進する施策のもとで苦しむ住民の姿を身近で把握できる地方自治体としては、その苦しみに共感し、配慮することが必要です。

 世界では 2017 年に科学者・医師 180 人以上が 5G の一時停止を EU に勧告しました「第 5 世代携帯電話システムは人の健康と環境に脅威となる」というものです。
 ベルギーの首都ブリュッセルでは 5G の導入を一時停止することをブリュッセル地域政府環境大臣が表明しました。スイスでも 2020 年 1 月以来、「安全性が確保されるための基準策定のために調査が必要である」という理由ですべての 5G 基地局の使用を止めています。
 米・サンフランシスコや香港などの都市でも一部の地域で禁止となっています。日本政府は健康への影響を否定しますが、WHOは「低レヴェルの電磁場曝露による健康への影響は認められない」、と結論づけながらも、「生物的影響についてはまだ知られていない部分があり、更なる研究を要す」としています。
 予防原則にのっとって被害を食い止めるルールが必要です。

 鎌倉市は「鎌倉市携帯電話等中継基地局の設置等に関する条例」を 2010 年に制定しています。この条例は、携帯電話等の中継基地局の設置に伴う市民と事業者との紛争の未然防止を目的としています。条例では、事業者が市内で携帯電話等の中継基地局を設置しようとするときには、事前に計画の概要を、一定の範囲で、建築物の敷地に隣接する近接住民に説明すること、また、近接住民が属する自治会・町内会(地縁団体)を代表する者に説明し、周知に努めることを規定しています。

 また、地縁団体の代表者への説明は、原則として、訪問することにより行うことを定め、事業者は、当該地縁団体から説明会の開催を求められたときは、説明会を開催することを規定しています。(施行規則第 5 条)
 また二宮町では 6 月 13 日の町議会本会議で説明会を義務付ける条例制定を求める陳情が可決されています。

 このように、県内市町村の中には、電磁波過敏症の方や電磁波による健康被害に不安を抱く住民の方と事業者とのトラブルを未然に防止するための対策を進めるところも出てきています。

●そこで知事にうかがいます。こうした対応を促進していくためにも、まずは、県として、化学物質過敏症などと同様に、電磁波過敏症の症状や、それにより苦しんでいる方が多くいること、また、そうした方々への配慮が必要なこと、その為に自治体で進んでいる条例化の取組などを、県民や、市町村に対し周知していく必要があると考えますが、見解を伺います。

3 県営住宅の建替に当たる情報提供
 住まいは人権という言葉があります。この間、私たちに寄せられる疑問はその住まいの問題の根幹を揺るがせられている当事者のみなさんが不安の中におられるという問題です。「県営住宅の建替計画があるらしいが、いつ出ていくことになっているのか」「建て替え期間中の住まいはどうなるのか」このような疑問が県民からしばしば聞かれます。そのたびにご担当に聞いては進捗をお伝えするわけですが、これは本来、県営住宅を運営する本県が責任をもって住民に告知するべきです。健康団地計画は 2019 年にできていて、その中に建替の団地が掲載されているということですが、建替計画の中には構想を練る期間が 2 年ほど含まれているとのこと、そういう事情は入所者が知る由もありません。いつまでは安心してそこに住むことができるのか、いつごろから一時的に立ち退くことになるのかわからないことが大勢の居住者の不安を招いています。また建替期間の住まいはどうなって家賃はどうなるのか自治会長に知らせて終わりではなくきめ細かにお知らせすることが必要です。


●そこで知事にうかがいます。県営住宅の建替計画の流れについて、平均的な調査期間や実施期間、建て替え期間中の住まいの保障、その間の家賃負担や移転先などの基本方針をうかがいます。また個別の計画のそれら詳細について住民説明会を開いて住民の不安に応え、丁寧に周知することが必要だと考えますが見解をうかがいます。


4 龍城ケ丘プール跡地整備計画の見直しについて
 平塚市が、134 号線の海側に本県より占用許可を得て利用していたプールを、老朽化を理由に 2013 年に閉鎖しましたが、この地をそのまま利用し、跡地に商業施設、駐車場等を設置し平塚市の観光開発に役立てようという計画があります。プール跡地だけでなくプール東側の海岸林も占用許可を得て、駐車場を建設する計画です。
 この東側の海岸林地帯を大規模伐採してしまうことについて地元住民の方々から強い懸念が示されています。私たちは何回か、現地視察をし、環境問題の専門家のご意見もうかがってまいりました。本県は今後平塚市と海岸占用の協議に入る可能性がありますが、まだその協議に入る段階ではないと考えます。一つには、この事業がこのまま実施された場合の後背地環境への悪影響への懸念が払しょくされていないこと、二つには、平塚市のこの間の事業推進の公正性に疑義があるためです。

 まず、防災と環境面の問題です。伐採予定地の樹林帯は保安林に指定されてはいませんが、横浜国立大学名誉教授、藤原一繪先生によれば、「プール跡地東側の樹林帯は第一級の防災林である。加えて樹林帯内の自然砂丘の構造が、津波・高潮の水量を吸収し住宅街への流入を減少させる働きがある」と述べています。住民の懸念のひとつは小学校や幼稚園が沿岸にあるこの地域で被害軽減に役立つ海岸林を伐採してしまうことです。

 国は 2020 年に「気候変動を踏まえた海岸保全のあり方」提言を行い、これに基づいた計画の改定を求めています。本県の基本計画は 2015 年改訂版であり、記載された湘南海岸の高潮水準は低く、実際の近年の高潮被害はこれを上回っています。プール跡地整備計画はこの現実に合わなくなった基準を元に作成されています。
 さらに、プール跡地整備計画には津波・高潮対策以外にも看過できない問題があります。市民のみなさんは、海岸整備にかかる専門家複数のアドバイスを受け、自ら飛砂や塩害などの調査を行い、そのうえで平塚市の計画を精査して、後背地の塩害、砂害に係わる風の流れについても平塚市は客観的な結果を得るには不十分な調査であるとしています。伐採後は、植栽で対応するとのことですが、根切りして移植した成木は海岸の厳しい環境では育たないそうです。ウミガメ等、海洋環境への配慮もありません。

●そこで知事に伺います。本県は県民とともに、40 年以上、当該樹林帯の育成に取り組んできた歴史があります。どういう目的で育成されてきましたか。また、県としては平塚市の飛砂や塩害調査が適正であったと判断していますか。


 もう一つの問題は、強引な計画の進め方です。
 地元住民から、開発見直しの署名が 1 万通も集まっています。そういった場合せめて丁寧な住民との懇談がもたれてしかるべきであるのに、十分な意見交換は一度も実施されていないとのことです。地元、花水地区の6自治会が集まる会合(花水地区自治会連合会、通称花自連)では、副市長が事業について説明しただけであるのに、市は「花自連で合意している」と公表し、平塚市は後日訂正の謝罪をすることになっています。また、エントランス棟内にコンビニエンスストアを設置する提案がありますが、平塚市は「警察に巡回等警備強化を依頼した」と公表しましたが、警察は依頼を受けていないと発表。平塚市は警察に依頼していないことを後日、謝罪発表したという事案もありました。
 平塚市が実施した当事業に対するアンケートで、賛成の回答を何者かが同じ FAX機から同じ時間帯に多数送信した形跡があったことが市議会で追及されています。
これほど不公正な計画推進を黙認していいのでしょうか。


 私たちはこの間、樹林帯の後背地に暮らす市民の皆さんの、樹林帯を守る活動をみてきました。樹林帯の手入れや清掃など手掛けながら、樹林帯の魅力を知ってもらうためのフェスを開催し、多くの樹林帯ファンを増やしておられます。平塚市の計画の正当性に疑問をもち実にいろいろな文献に当たり、何人かの海岸樹林の専門家を招き、またご意見を聞きに出向き、飛砂、塩害の独自調査をち密に行い、涙ぐましい努力をされています。
 6つの自治会の会長さんをふくめ住民が持っておられる懸念に、真摯に向き合おうとしない平塚市の姿勢は、公正かつ民主的科学的な行政運営とは対極にあり、そこに県が無批判に便乗することは許されないと考えます。住民のみなさんは公園整備そのものに反対されているわけではありません。海と後背地の安全と環境を守りたいというささやかで切実な願いに応えることが必要です。

●そこで知事に伺います。平塚市の、開発ありきで虚偽の説明まで重ねて進める計画によって、地元住民の暮らしや安全が脅かされるような事態は、県として容認してはならないと考えます。平塚市の計画通りに海岸を利用した場合の危険性並びに環境への影響にかんがみ、計画を改めて検証し、県と県民が育ててきた樹林帯を保全し、当事者である市民の平穏な暮らしと環境の保持に尽力することが必要だと考えますが見解をうかがいます。


5 太陽光パネルの設置義務化について
 電気料金は、6月には電力会社の申請を国が認可し、大幅な値上げとなっています。ウクライナ情勢の影響などで電力調達価格が高騰したことも背景にあります。いまこそエネルギー源の輸入に依存しない地産地消の再エネの普及が大きな課題です。先日、太陽光パネルの設置について学ぶ機会があり、東京大学大学院の前真之准教授の講演を聴きました。そもそも石炭火力や原発を作って利潤を得るのは大企業だけであり、燃料輸入の商社も空前の利益を上げている中で、燃料代は国外に流出し、日本を貧しくする。現状のやり方では電気代は高いままで雇用も増えず、地域からお金が流出する一方だから、地域エネルギーの循環をと訴える前氏の論、国の脱炭素があてにならないから地方が頑張らなければならないという論調はまさに的を射ているという思いでした。


 本県の共同購入事業は全国知事会の先進政策バンクに登録された政策の中から2020 年度に優秀政策として表彰されています。本県は ZEH や ZEB の普及に取り組んでこられたことも承知しています。これらのご努力をさらにいっそう促進していただくべく質問いたします。


 講演の中で京都大学の再生可能エネルギー経済学講座の諸富教授の言葉が引用されており、直近で拡大余地が大きいのは「住宅建築物に設置する太陽光発電」と「農地での営農太陽光発電」の二つだとされています。なかでも住宅は将来の分散型エネルギーシステムに不可欠という展望により住宅産業の新しい発展を見出すべきとしています。


 自治体としては鳥取県の高断熱義務化、京都府の太陽光の説明の義務化、東京都と川崎市の太陽光の設置義務化が先進事例として紹介されました。取り組んでこられた自治体職員の方々が自信をもって報告され、他自治体への普及を願っておられたのが印象的でした。本県も 2050 年カーボンニュートラルを掲げる以上は業界の自主性に頼るのは限界があり、太陽光発電に対しマイナスイメージをもたらすフェイク情報があるなかで、正確な情報提供と政策誘導が重要になると考えます。先進自治体で事業者に対する責任を求める条例がすすんでいることはやはり本気の脱炭素への取組の姿だと考え、本県も事業者の手上げを待たず制度化が必要であると考えます。
 国においては、省エネ性能の表示制度も制定し、住宅販売や賃貸業などの事業者に向けて、物件の省エネ性能を開示する制度を導入するという案も出ています。
 太陽光発電は毎月の電気代を削減でき、停電時にも電気が使えるため、防災力が高まり、発電にあたり CO2 をほとんど排出しないため、脱炭素社会に貢献する太陽光パネルの設置は長い目で見れば事業者、居住者双方にとってメリットが多いと考えます。京都府のように建築士から建築主に対して、再生可能エネルギー設備のメリット(環境負荷低減効果や光熱水費の削減等)等を御説明いただくことで、より一層の導入拡大を目指す説明義務化を図ることも太陽光パネル設置促進に大きく寄与するとは考えます。しかし最も促進効果が期待できる施策の取組を提案したいと思います。国には義務化に向けた検討を加速させることを要望しておられるとのことです。そこに効果を見出すならば、本県として取り組むべきと考えます。

●そこで知事にうかがいます。本県においても新築住宅等への太陽光発電設備の設
置、断熱・省エネ性能の確保等を義務付ける制度を創設すべきと考えますが見解を
うかがいます。

追記
県の回答はこちらから⇒質問趣意書(文書質問)への回答


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