日本共産党神奈川県議会議員団

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議会報告
2023年3月17日

上野たつや議員の反対討論(2023年3月15日)

2023年 第1回定例会 反対討論

2023年3月15日

 日本共産党の上野たつやです。
 私は、共産党神奈川県議団を代表して、本定例会に提案された82議案(新46+補正36)のうち70議案に賛成し、12議案には反対する立場から討論を行います。

 まず、定県第1号議案「令和5年度 神奈川県 一般会計予算」についてです。
 新年度予算案は、知事選を控えて骨格予算として編成されたとのことですが、長引くコロナ禍と物価高騰の渦中にあり、県民の生活を立て直し、命と、営業と暮らしを支えることができる予算であるべきです。
 予算の中では、“小児医療費助成制度を拡充”したこと、“気候危機打開に向けた各種施策の拡充”、“がけ地対策・河川整備などの水防災戦略の強化”や、“県立教育施設や県有施設の老朽化対策”など、県民の安全・安心や、生活に直結する事業を推進するとしたことは重要であり、引き続きの推進を強く要望します。

 しかし、問題を含む予算もありますので、反対の理由を述べます。
まずは、知事の政治姿勢について、一つ目は、「安全保障に対する認識と基地問題についての姿勢」です。
 知事は、私たち共産党神奈川県議団の代表質問において、敵基地攻撃能力をはじめとする安全保障政策について「県民の安全安心の確保にも寄与するもの」、横浜ノースドックの新部隊編成については、「配備撤回等を求める考えはありません」と答弁しました。
 しかし、日本の敵基地攻撃能力が実行された場合には、「相手国の報復」を想定し、防衛大臣は「日本に大規模な被害が生じる可能性」を認めています。加えて、基地の整理縮小・返還を県是として主張しながら、明らかな基地機能強化について国や米軍に抗議・撤退を求めずに受け入れる姿勢は問題です。
 こうした認識では、県民の命と暮らしを守ることはできません。大軍拡路線にストップの声をあげるべきです。

 二つ目は、「石炭火力発電所の稼働中止を求めない姿勢」です。
 新年度予算は、脱炭素社会へ向けた取組みの推進として、前年度から約27億円増額の約62億円となり、この取組みによって推計値ではありますが、年間で約3.5万トンのCO2削減になるとのことです。
 しかし、試運転が始まっている横須賀市の石炭火力発電所がフル稼働すれば、CO2は年間で726万トンの排出となり、県の年間排出量の約10%に相当します。この石炭火力発電所に対して、毅然と稼働中止を求めなければ2050年温室効果ガス 実質排出ゼロの目標達成はできません。
 国連が繰り返し「先進国は2030年までに石炭火力を段階的に廃止すべき」と指摘しており、G7で石炭火力からの撤退期限を示していないのは日本だけという状況です。神奈川県として、石炭火力からの脱却の意志を示し、国に稼働と建設の中止を求めるべきです。

 三つ目は、「PFAS(有機フッ素化合物)への姿勢」です。
 米軍基地への立ち入り調査について、日米地位協定に環境に関する規定がなく、基地内の環境管理が米側の裁量に大きく委ねられているという課題認識を示し、日本の環境法令を米軍に適用できるよう、日米地位協定を改定するために働きかけている点は大変重要と考えます。
 しかし、PFASが人体に与える影響について、県として少なくとも「何らかの影響はある可能性が高い」と認識しているにも関わらず、その影響調査について、国の検討会を待たないと動けないような姿勢では、県民のみなさんの健康を守ることはできません。
 「科学的な不確実性を、対策を取らない理由にせず、予防原則にのっとり、汚染状況を特定し広がらないようにすることが基本だ」との専門家の指摘を踏まえ、県として独自の健康調査、農作物や水産物の調査を行うべきです。

 四つ目は、「同性パートナーシップ制度に対する姿勢」です。
 パートナーシップ制度は、同性カップルの方々にとって暮らしやすい環境づくりにつながる有効な制度であるとの認識を示しているにもかかわらず、県独自に制度を創設しない姿勢は、ジェンダー主流化を掲げる県の取り組みに反するものです。全ての市町村が制度を導入したとしても、県立施設での対応や都道府県同士の連携など、県が制度創設する意義は充分にあります。
 全ての個人が尊重される人権尊重の観点から、県として同性パートナーシップ制度の実施に向けて取り組むべきです。

 五つめは、「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」についてですが、コロナ禍で不要不急とされ、事業が停止していた未病関連事業が、骨格予算でありながら引き続き提案されており、抜本的な見直しが必要です。
 そもそも、県が進めようとしている未病関連事業は産業支援であり、未病サービスや関連商品の消費を促す取り組みが優先され、県民の健康維持を第一の目的にしたものではありません。本来、健康増進のために県が優先して行うべきことは、市町村が行う特定健診や特定保健指導、健康診査や健康教育、がん検診など科学的なデータに基づいて行われる様々な取り組みを支援することであり、実施率が低い事業こそ改善策を講じるべきです。

 このような知事の姿勢は、ぜひ改めるよう求めます。

 次に、具体的な予算の内容から述べます。
 まず、「セレクト神奈川NEXTなど、企業誘致施策について」ですが、これまでも指摘してきた通り、神奈川県の立地条件などを考慮すれば、大企業を含む企業誘致施策に過大な税金投入を行う必要はないと考えます。

 次に、「住民の要望とはかけ離れた事業や大型開発事業について」です。
 県は、ヘルスケア・ニューフロンティア政策の推進に向けた第二の核として、藤沢市村岡と鎌倉市深沢のまちづくりを村岡新駅と一体で進めようとしています。
 新駅設置と関連する区画整理事業では、資材の高騰や建設工事における週休2日制の導入などの影響で事業費が増えており、新駅の建設についても当初予定している約150億円の建設費用よりもさらに増加する懸念があります。
 藤沢・鎌倉市民から「新駅設置の必要性がない」という反対意見があるように、地域住民の要望から進められている事業とは言えず、事業の中止を求めます。
 その他、“受託リニア中央新幹線建設推進事業費”や“東海道新幹線新駅を誘致する東海道新幹線新駅設置推進対策費”と、それに関連した“ツインシティ計画に伴う土地区画整理事業費補助”、“明治記念大磯邸園整備特別補助”、そして“国直轄事業負担金としては、横浜湘南道路の費用”など、不要不急の事業と言わざるを得ないことに加え、環境への影響、多額の費用をかけることに対する県民の反対意見などを受け止め、これらの事業の推進はやめるべきです。

 また、“政令市 市街地再開発 臨時補助事業”の増額が提案されていますが、政令市に対しては再開発事業費補助を出すことをやめた経緯があります。加えて、浸水想定区域に予定している再開発などに補助金を出すとのことですが、災害に強い県土づくりに資するというならば、浸水想定区域に多くの住民が居住するような計画こそ見直すべきです。
 これに関連して、定県第144号議案「令和4年度 神奈川県一般会計補正予算(第7号)」には、この事業の繰越明許費が計上されていますので、併せて反対します。

 次に、「県立高校改革について」です。
 本県の高校1校当たりの生徒数は、全国一多いにも関わらず、さらに大規模化を生み出す高校の統廃合など、県立高校改革の問題点について、私たちは繰り返し指摘をしてきました。
推進校や研究校、重点校の名で学校の特色付けを進めた結果、県立高校間の格差が広がり、中途退学が非常に多くなるなど無理な特色付けの弊害が現れ始めていると考えます。
 県立高校改革はやめるべきであり、これに関連して、県立高校の統廃合によって管理職の職員数が減ることになる定県第26号議案「神奈川県 職員定数条例の一部を改正する条例」については、反対します。

 また、教育施策に関わっては、朝鮮学校に通う生徒への学費補助を行うことや外国人学校への経常費補助を復活させる予算が計上されていないことから、賛成できません。

 最後に、「議会費について」ですが、これまでも指摘してきた通り、県政調査については、視察の必要性があれば政務活動費で行うべきと考えます。

 以上のような理由から、定県第1号と関連する第26号、第144号議案に反対します。
 中止や見直しを求め、改めるべきと指摘した予算については、“小児・重度障害者・ひとり親等の各種医療費助成制度の拡充”、重すぎる教育費負担の軽減策として“学校給食費の無償化”、高等教育の学費負担軽減策として“給付型奨学金の創設”など、県独自の少子化対策を強化することが必要です。
 また、“さらなる防災対策の強化”、“高齢者補聴器補助”、“国民健康保険料の引下げ”、“当事者目線の障害福祉推進条例に基づいた予算の拡充”、“特別支援学校の増設”や“教員の増員”、など、県民が望む、優先度の高い施策に振り向けるよう求めます。

 次に、定県第2号議案「令和5年度 神奈川県 市町村自治振興事業会計予算」、定県第4号議案「令和5年度 神奈川県 公営競技収益配分金等管理会計予算」についてですが、私たちは公営ギャンブルの廃止を求めておりますので、賛成できません。
 関連して、増額の補正予算である、定県第145号、147号議案にも、反対します。

 次に、定県第9号議案「令和5年度 神奈川県水源環境保全・再生事業会計予算」についてです。
 この事業における水源環境保全、再生への取り組みは、水源環境保全税などを財源とするものです。水源環境の保全・再生施策には、治山や水源林整備事業などが含まれており重要なものですが、こうした事業は一般財源で対応し、県民に負担を求めるべきではないと考えますので、反対します。

次に、定県第13号議案「令和5年度 神奈川県 国民健康保険事業会計予算」についてです。
 国は、2020年度から各地方自治体の一般会計からの決算補填目的などの法定外繰り入れをやめさせるために、赤字解消計画を策定させ、その計画の進捗状況に応じて保険者努力支援制度の特定配分を設定しており、法定外繰り入れを行なっていない市町村に満点の30ポイント付与、以下5段階に評価され、計画通りに削減していない市町村はマイナス15ポイントが設定されるなど、自治体の努力を締め付けています。
 2021年度決算剰余金は、国庫返納金に全額充当したため、新年度の保険料の軽減対策ができず、引き上げが十分考えられ、大変危惧されます。
 国民健康保険料は、協会健保などと比較しても「保険料が高すぎて払えない」という住民の声に応えるために、各自治体が苦慮しながら保険料引き上げを抑えるために取り組んできました。本来、国の責任で保険料を引き下げるために国庫負担金を増やす必要がありますが、保険者努力支援制度で、自治体の努力を締め付けること自体、安心して医療を受けるための社会保障制度としての国民健康保険制度の目的から外れていると言わざるを得ません。県もこれに準じた対応をしており、改善すべきと考えるので、反対します。

 次に、定県第16号議案「令和5年度 神奈川県 県営住宅事業会計予算」についてです。
 本県の健康団地計画に基づき新規の建設事業が予定され、新年度から始まる県営住宅の建設工事は県の直営で行うということで、ぜひ、建て替えについては直営で進めていくよう要望します。しかし、昨年度から始まった相模原市の上溝団地と横須賀市の追浜第一団地は、PFIによる建て替え事業が進められているため、反対します。

 次に、定県第18号議案「令和5年度 神奈川県 水道事業会計予算」についてです。
 これまでも指摘してきましたが、箱根地区の包括民間委託はやめるべきと考えます。箱根地区水道事業包括民間委託は第二期となっていますが、世界的な水メジャー企業に日本での水道事業の運営、実績づくりをさせる結果となっています。
 また、今後の第3期には本格的な包括民間委託ということで、10年の契約期間ということにする方針が示されています。これまでの事業者の実績作りという目的はなくなったものの、水道事業の民営化につながる包括民間委託のシステムを全国に向けて発信するという姿勢は改めるべきです。
 命を守る水道が水ビジネス多国籍企業の営利の対象とされないためにも、包括民間委託ではなく直営に戻すべきと考えますので、反対します。

 最後に、「定県第159号議案 神奈川県手数料条例の一部を改正する条例」についてです。
 この議案には、新たに、水産動植物の採捕に係る許可の申請について手数料を設ける内容が含まれています。
 全国で手数料を徴収しているのは3府県のみであり、多くの都道府県では手数料を徴収していません。研究・調査をしやすい条件を整備しておく必要性を考慮すれば、これまで通り許可の申請に手数料を設けるべきでないと考えますので、反対します。

 以上の理由から、定県第1号、第2号、第4号、第9号、第13号、第16号、第18号、第26号、第144号、第145号、第147号、及び第159号議案に反対することを述べ討論といたします。
以上です。


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