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井坂しんや議員の反対討論(2022年10月14日)

井坂しんや議員の反対討論(2022年10月14日).jpg

 

2022年第3回定例会本会議反対討論

2022年10月14日

 

日本共産党の井坂しんやです。

日本共産党神奈川県会議員団を代表し、知事から提案のありました18議案の内13議案に賛成し、5議案に反対する立場から討論を行います。

まず、定県第80号議案と定県第81号議案についてです。

この議案は、県営上溝団地と県営追浜第一団地の建替えに関する特定事業契約です。

これまでも述べてきたように、県営住宅の建替えを進めることについては住環境の改善につながることであり、進めるべきと考えていますが、その手法にPFI方式を用いることについては公共の役割が後退する可能性があるなどの理由から反対をしてきました。

特に、今回、県営上溝団地については、現在の住戸数よりも約100住戸減少する一方で、余剰地を売却するとのことです。減少した約100住戸分は別の団地にプラスするとのことですが、県営住宅への募集が多い中で、このように住戸数を減らす状況となったのはPFI手法で行うことが要因と考えられ、住戸数を減らさずに建替えるべきと考えます。このような観点から県営住宅の建替えは直営で行うべきと考えますので、定県第80号議案、定県第81号議案に反対をいたします。

次に、県報第3号についてです。

この議安は損害賠償請求を訴えられ、その訴訟に敗訴したため、控訴することを専決処分した案件です。

この裁判は、横浜市泉警察所内で巡査が拳銃自死をした事案について、同巡査の両親である原告から、息子は上司や同僚からのパワーハラスメント等によりうつ病にり患したと考えられることから、泉警察署の管理監督者は、息子に拳銃を所持させない勤務に就かせる義務があったのにこれを怠った責任があるとして、2018年3月12日神奈川県を被告とする損害賠償請求の訴えが提起されました。2022年7月29日に原告の主張が認められ、県警本部に損害賠償が命じられました。県警本部はこの判決に事実誤認があるとして控訴するものです。

防災警察常任委員会の資料では警察署員などの証言から「男性巡査が精神に不調をきたしていた事実がない」とされていますが、これらの証言や医師の診察を受けていないことをもって事実がないとは言い切れず、被害者が交番勤務ができなくなるほど落ち込み、上司が休暇の取得を進めたことと整合性が取れません。また、県警として事実を争わないとしているハラスメントの存在が精神の不調に影響を及ぼしていた事は容易に推察されます。

さらに、家族あての遺書に「誰の責任でもない」との内容が記載されていたとしていますが、この言葉は、亡き署員の自責の思いからくる他者への配慮であると私たちは考えます。この言葉を自らの免責の口実とすることは、誠実な姿勢とはいいがたいものがあります。

よって、「巡査に生命や健康の危険が生じる恐れがないと確認すべきだったのに、その義務を怠った」として県警の過失を認めた判決を正当と認めるため、控訴には道理がないと判断し、県報第3号の専決処分の承認に反対をいたします。

最後に、定県第84号議案葉山港の指定管理者の指定についてです。

今回、候補者となっている湘南サニーサイドマリーナはこれまで横須賀市の佐島漁港芦名地区において条例違反を繰り返し、行政指導を受け、昨年行政罰である過料の一つである過怠金まで課せられた事業者です。

小さい港ではありますが、その港の中で3か所の水域を無許可で占有する違反をしていました。無許可で約140本もの杭を打ち、浮桟橋をつくったため、市から原状回復の文書指示などが出されるとともに3件の過怠金を課せられています。ちなみに横須賀市の管理する港においてこれ以前に調査できる範囲では過怠金を払うケースはなかったとのこと。また県の管理する港においても過去5年で過怠金を課せられたケースはないとのことで、このようなケースはまれなことです。私は、それだけ悪質だったからこそ過怠金を課せられているのだと思います。

また、この地区で起こっている一連の問題に実質的な事業主体として湘南サ二ーサイドマリーナが係わっています。県の天然記念物の岩礁を無許可で破砕したことについては、県教育委員会は市教育委員会と事業者に対して厳重注意をするとともに、3年間の水質調査などの条件を付しています。

さらに、漁礁兼消波提の延長工事を無許可で行い市の防波堤に連結したり、国も県も補助金を入れて整備した5号防波堤、4号防波堤の消波ブロックを無断で移動していたりと違反を繰り返し、市から原状回復の行政指導を受けました。しかし、5号防波堤については、最終的には原状回復をしないまま、防波堤そのものを横須賀市が事業者に売却するというこれまでに聞いたことのない対応を行っており、横須賀市の対応の甘さが浮き彫りになっています。

また、許可もなく違法に岸壁をかさ上げしていたことが2件明らかになっており、公有水面埋め立て法違反の疑いがありました。県は法違反について市から見解を求められ、上部の土地を利用しなければ法違反ではないという見解を出しました。そのことから最終的には、新たにできた土地を使用しないことを条件に法違反ではないとされています。しかし、住民からの通報があるまでは、この土地を利用していたことが明らかであり、原状回復させるべきところを後から許可をするという行政の甘い対応がここでもありました。

この件に対しても護岸補強工作物の占有申請をしていなかったことにより過怠金が科せられています。

これらの一連の問題は、過去3年の間に行われたことであり、行政指導や処分が繰り返し行われてきました。横須賀市からも、事業者に対して文書で、漁業環境の保全について「漁港管理に係る倫理の保持と法令等の遵守を強く要請」している状況です。

しかし、外部評価委員会の評価点数を見ると「コンプライアンス、社会貢献」の項目は5点満点中4点。「事故・不祥事への対応、個人情報保護」の項目は5点満点中4点となっており、選考理由のコメントでは、管理運営方針について、「漁業者のことも含め、海のことを真摯に考えており、評価できる。」となっています。

この評価は正当な評価でしようか。佐島漁港芦名地区は、静かな漁港だったものが、大型のクルーザーが何隻も停泊する一大マリーナへと変貌し、到底漁港といえる状況ではなくなっています。また、横須賀市が文書で要請した内容とも外部評価員会の評価はかけ離れているといわなければなりません。このような認識の違いを生んだのは県の責任です。

当然これだけの条例違反を繰り返した事業者は「コンプライアンス、社会貢献」「事故・不祥事への対応、個人情報保護」の項目に係って、不適格とされるべきですが、県土整備局の答弁では、これらの条例違反は「重大な事故や不祥事にあたらない」との見解が示され、これらの条例違反や過怠金を課せられている内容について外部評価委員に伝えていないとのことです。これでは正当な評価ができるわけがありません。

また、私の質問に対する答弁の中では、県の条例に違反して過怠金を課せられた事業者であっても「重大な事故や不祥事に当たらない」として指定管理者の選定の際に、外部評価委員には伝えないとの意思が示されました。さらに、これに関する陳情に対する答弁の中では、過怠金は社会的に大きな影響を及ぼすものではないと答弁しています。このような見解や答弁は、過怠金という行政による罰則をあまりにも矮小化するとともに、県民に対し、法令遵守の意識を低下させるものといわなければなりません。このことは、著しく公正性を欠くもので、多くの県民の理解を得られるとは到底思えません。

知事は、11日の記者会見で、指定管理者の選定に係る運用について今後検討していきたいと答弁されていますが、今回のことにどう対応するかが大切で、今後にとっても大きな影響を及ぼすと思います。

さらに、この議案に関連し、葉山町議会では11日の本会議で、県知事に対して「葉山港の適正な港湾運営を確認する意見書」が全会一致で可決されています。また、葉山港の利用者団体からは指定管理者の選定に問題があるため指定管理者の再考を求める意見が出ています。

議案となっている事業者がこれまで近隣の漁港で行ってきたことを知っているからこそ不安が増大しているものであり、このような地元の議会や利用者の意見を尊重するべきと考えます。

指定管理者はだれが決めるのでしようか。議決事項である以上、最終的には議会が決めることになります。

私たちは、今回の議案は議会としての行政のチェック機能の役割が強く求められているものと思います。ぜひ県会議員のみなさんにはこの議案に反対していただくよう求めるものです。

以上のような観点から、県の指定管理者の選定に到底賛成できませんので、定県第84号議案葉山港の指定管理者の指定について反対いたします。また、この議案に関連し債務負担行為の設定をする定県第71号議案令和4年度神奈川県一般会計補正予算第2号にも反対いたします。

以上で討論といたします。